次世代が幸せに暮らせる地域を残したい – しきしまが目指す「当たり前」のこと

※トップ画像:フジバカマを吸蜜するアサギマダラ – wikiwand

地球上に生息する1千万種といわれる「いきもの」は、必ず死ぬから「いきもの」と分類されます。その種が地球上に「いきもの」として存在し続けるためには、「生きている」ことを子孫に委ねるしかありません。だから、「いきもの」はみな、子孫が生きやすいように進化したり、生きやすい環境を残そうとしたりします。

人が何のために生きるかは、人それぞれで、他人が口をはさむことではありません。しかし「ヒト」である前に「いきもの」であるあなたは、子孫が生きやすい環境を残すために生きていますか。

アサギマダラという蝶

アサギマダラは、マダラチョウ科の仲間で、ほぼ日本全国に分布しています。 秋の七草フジバカマにヒラヒラと舞うこの蝶に、心癒されるのは私だけではないでしょう。いかにも儚げなアサギマダラの成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ移動します。

海を渡る「渡り蝶」とも呼ばれ、マーキング調査から、その飛翔距離が2,400km以上の個体も確認されています。日本と台湾や中国南部を行き来するアサギマダラが、渡りをする理由や渡りをすることができる能力については、いまだにはっきりと分かっていません。

  • なんのために長距離移動するのか?
  • どうやって海を越えるのか?
  • 海を渡るだけの体力をどこにたくわえているのか?
  • 見知らぬ土地の方角がどうして分かるのか?

様々な推測や解明されていない謎が、アサギマダラにはたくさんあります。しかし、「種の保存」、子孫を残すための決死の渡りであることを否定する研究者はいないようです。子孫のために命を賭す蝶のように、「いきもの」が生きる普遍的な理由は、「子孫のため」と言っていいでしょう。

そして、すべての「いきもの」は、他の「いきもの」とつながり、依存し合って生きています。それは、互いが「いきもの」として存在し続けるために最も適しているからで、絶妙な生態系のバランスが、自然界の多様性を保っているのだと思います。

「いきもの」でなくなってしまった「ヒト」

「何のために生きているか」と問われたとき、あなたはどう答えますか。多くの人は「幸福な生涯を送るため」、「自分と家族の幸せのため」などと答えます。正解はありませんが、強欲な人を指す「今だけ、金だけ、自分だけ」とどれほどの違いがあるでしょう。

人類進化の4段階を示す頭骨 – 国立科学博物館

地球上の「いきもの」は、およそ35億年前に深海で生まれた一つの細胞を先祖とし、およそ2億5千万年前に哺乳類の、500万年前に「ヒト」の先祖が生まれました。「ヒト」は、猿人、原人、旧人、新人の順に、恐らくは「子孫のために」進化してきました。

そして、脳が発達して道具を使い、言語を使い、火を使い、直立二本足歩行をする「ヒト」は、やがて自然の一部であることを忘れ、この100年ほどで地球上の資源を貪り尽し、SDGsが達成できなければ、子孫が生きられない地球にしてしまいました。「ヒト」は、「子孫のために」生きる「いきもの」ではなくなったのです。

しきしまが目指す当たり前のこと

「しきしまの家」プロジェクトは、今を生きる私たちが、不安なく幸せな生涯を送るためだけではなく。私たちの子孫、しきしまのその時代を担うすべての人々、「次世代」が、今以上に幸せに暮らし続けられる地域を残すための取り組みです。

「あなたが不幸なのは、あなたの努力が足りなかったから」という自己責任社会、経済中心の社会が、人口拡大、経済成長とともに生まれました。人々の努力はお金に向かい、過疎が進行し、地域に残る住民同士の関係性も希薄化しました。

人口減少、高齢化社会を迎え、私たちが何も行動を起こさなければ、地域、集落は消滅に向かい、私たちが不安なく生涯を送ることはおろか、幸せな暮らしの続く地域を次世代に残すことなど到底かないません。

結による田植え(昭和40年代・押井町)

私たちは、かつての農村社会にあった「結」に見られるような、共同体中心社会を、情報、科学技術も駆使しながら新しい形で再生し、農村に価値を見出す都市の人々とつながることで、この難関を乗り切ろうと考えました。

自分たちが無事に生涯を生き抜き、次世代が生きやすい環境を残すために努めるという、「いきもの」として当たり前のことをやろうと決意しました。そして、「ヒト」も自然の一部であることを自覚して、美しい農村景観を守り、多様性に富んだ自然環境を守っていきたいと思います。

次世代のために「何を創るか」より「何を残すか」

100年前に生きた人々が今日の社会を想像できたでしょうか。私たちも、100年後の地球を、地域社会を見通すことなどできません。未来の人類のための発明が、必ずしも人類を幸福にするかどうかも分かりません。

生命にあふれる地球を守り、「ヒト」を含む「いきもの」の無事が続くために、科学技術の進歩に努めなければならないことは言うまでもありませんが、誰にでもできることではありません。

想像できない未来を生きる人たちに、私たちができることは、「残すこと」ではないでしょうか。私たちが勝手に、未来には不要なものとして消失させてしまったものが、実は、未来にとって最も重要なものであるかもしれません。

より多くの選択肢を未来につなぐ、その一つとして、私たちは、かつての農村社会、共同体中心社会に存在した互助の仕組み「結」を掘り起こし、次世代につなぐことにしました。不要と切り捨てられることになるかもしれませんが、「ヒト」は、群れて生きる「いきもの」、必ず未来の人々に感謝されると確信しています。

私たちは、クラウドファンディングに挑戦しています。ご支援、拡散をお願いします。

困りごとの相談窓口&老若男女誰でも集える居場所 「しきしまの家」をつくりたい

3 COMMENTS

村田元夫

壮大な視野から自分が住んでいる地域への想い。すばらしいのコメントと思いました。

返信する
鈴木辰吉

村田元夫さん、鈴木誠さん。コメントありがとうございます。「引き受けて生きる、託して逝く」という言葉の意味が分かる歳になりました。地球の歴史から見ればほんの一瞬の人生、志の実現に向けて覚悟を持って生き、あとは次世代に託したいと思います。

返信する

村田元夫 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です